2013.01.31 Thursday

ESSO RACING TEAM STORY 第31回

 

Motor Press(モータープレス)
極個人的な自動車偏愛日記



このタイトルを見て、おや? と思われた方は相当なモータープレス通。
実はMP解説当初、1972年からFJ360、FL500、FJ1300に参戦した
伝説のプライベート・ティーム、ESSO RACING TEAMの物語を連載しておりました。

当時の関係者の皆さんにご協力いただき、知られざるストーリーを掘り起こしてきたのですが
昨今は主に僕のサボり癖で休載中。そんな体たらくを知ってか知らずか
先日お台場で見つけたダイハツ・フェロー7の資料を探しているときにこんな物を見つけました。

AUTOSPORT  1969年4月号(三栄書房 刊)

なんと、日本のプライベーターの草分けのひとつでもある、レーシング・クォータリーが
ESSO RACING TEAMのルーツともいえる、”チーム・レーシング・クォータリー(TRQ)"を
設立したという記事。故 山梨信輔代表を中心とした黎明期のメンバーが
青山にあったRQの前で写っている非常に貴重な写真付き。

AUTOSPORT  1969年5月号(三栄書房 刊)

さらに翌月の号には、グッドイヤー・レーシングタイヤの販売店として
店舗を拡大した時の姿も掲載されていました(コニリオやニアルコの広告も気になります)。
なにせ当時の青山のショップの外観の写真は少なく、
広告ながらこれは非常に貴重な資料といえます
(確かに今も残る建物とあまり変わっていませんね)。


なぜ急にそんな話をしたのかというと、1月27日にお台場で行われた
JCCA ニューイヤー・ミーティング会場内のN.Z Racing Sports Clubのブースで、
久々にアウグスタMkIIIに再会したからなのです。

実はこれも今回のNYMの目玉のひとつでありました。
会場にお出かけのみなさん、お気付きになりましたか??

N.Z Racing Sports Club代表である染谷さんが、このNYMにアウグスタMkIIIのカウルを
持ち込んだのは、2011年の時のこと(そのときの様子はコチラ)。
あの時は、1台分のカウルを見せてもらい、非常に興奮したのですが……。


な、なんと今回はカウル2台分。
しかも1台はシャシフレーム付き!
僕の連載休止を尻目に、アウグスタMkIII(当時のエントリー名はエッソ・エクストラ)の
レストアは着実に進んでいたのでした!


染谷さんいわく、このカウルが載せられているフレームは空冷用のモノだとのこと。

かつての連載の中で、デビュー戦となった’72年の日本GPから、ESSO RACING TEAMの
2台のワークスカーはそれぞれ、ホンダN360の4ストユニットと
スズキ・フロンテの2ストユニットの2種類を使い分けていたことはお話しました。

てっきりその2台はエンジンが違うだけで、フレーム自体はまったく同一の物と
思っていましたが、ちょうどカウルの後端の下に位置するフレームサイドにつく
半楕円状のフレームが空冷モデルの証。
水冷モデルはサイドにラジエーターが付くために、このフレームが付かないのだそうです。

AUTOSPORT 1972 5/1号付録 5th TOKYO RACING CAR SHOW(三栄書房 刊)

これはアウグスタMkIIIがデビューを飾った'72年の第5回東京レーシングカーショーの様子。
真ん中にあるのが、空冷仕様。左隣りが水冷仕様。
確かに水冷仕様はラジアスアームの付け根のところに、この半楕円のフレームがないですね!

いやぁ、散々当時の写真を眺めていたつもりですが、初めて気づきました。

AUTOSPORT  1972年 4/1号(三栄書房 刊)

確かにAUTOSPORT  1972年 4/1号の中の
「MACHINE  CONFIDENTIAL インボード・コイルの実戦マシン アウグスタ・マークIII」
(鷲尾基彦 解説)に載っている、青山の工場で撮影された製作中の
フレームの写真にも、この空冷用のフレームが写っていますね。


ちなみに日曜のお台場では、2台分のカウルが展示してあったと書きましたが
ご覧のようにノーズは水冷用(左)と空冷用(右)にカラーリングが
塗り分けられておりました。

いやーまだまだ勉強不足ですね。
今年は、ESSO RACING TEAMが短い活動に幕を降ろしてから
ちょうど40年にあたる節目の年ですから。
なんとか纏めないと(会う人みんなに言われます……)!
染谷さん、ありがとうございました!!

ではでは。




2013.01.29 Tuesday

DAIHATSU Fellow 7 その2

 


Motor Press(モータープレス)
極個人的な自動車偏愛日記



昨日のつづき。
日曜に開催されたJCCAニューイヤーミーティングで見かけた
ダイハツ・フェロー7の話題です。


このフェロー7を展示されていた、鈴木モータースの鈴木社長によると
当時製作されたといわれているフェロー7は合わせて3台。
(コメントを寄せていただいたlotus49ford さんによると4台説もあるそうです)
その内の1台であるこの個体(東京レーシングカーショーの展示車?)は、
昨日 Bob日高さんがコメント欄に書いていらしたように
ながらくダイハツ・コンパーノ・クラブ・スポーツ(DCCS)の
事務局があった都内のディーラーの中に埃を被った状態で放置されていたのは、
マニアの間では周知の事実だったのだそうです。
ただ、オフィシャル的には「フェロー7は現存しない」ということで
その姿が公になることはありませんでした。

それが数年前にどういうわけか、とある解体業者の元でスクラップになるところを
偶然救出され、現オーナーの元でレストアが始められることになったのだとか。
ある意味、そんな偶然がなければ、歴史的な遺産が失われるところでした。

もちろん、もとはメーカーの所有物ゆえ、守秘義務や税務上の問題など
こういうクルマには様々な制約があるのは理解しています。
しかしながら、そういった体面上の都合で、こうした自動車文化遺産が
廃棄処分されてしまうのは、非常に問題だと個人的には思います。
(過去にも廃棄処分の物が個人にサルベージされて逆に問題になった事がありましたが)

もしメーカー自身の手で、過去の作品群をしっかりと保存できない場合は
心ある個人にその維持を委ねるという流れがあってもいいのでは? 
と、このフェロー7を見て思った次第。
全てを無かったことにするのは簡単ですが、一度失われたものは
もう二度と取り戻すことはできませんから。


さて。これがフェロー7のコックピット。
フロントのオーバーハングが長いので、まるで1リッタークラスのFRスポーツに見えますが
この幅広のセンターコンソール下にエンジン&ギアボックスが納まる
フロント・ミドシップ・レイアウト。
インパネ上部の穴は、キャブに繋がるエアインテークなのだとか。
なかなか面白いデザインです。


コックピットを逆サイドから。センターコンソールにちゃんとフェローの
エンブレムが残っているあたりが泣かせます。

60年代のダイハツ・プロトの開発において
かなりイタリアのレース界から影響を受けたという噂を聞いた事がありますが
そういう目で見ると"イタリアの虫"と呼ばれる小排気量スポーツカーとの
近似点も感じられますね。


フェロー7のディテールの数々(クリックすると拡大します)。

6500r.p.m.からレッドゾーンの始まる
レブカウンターや、燃料、水温などのコンビメーターはデンソー製。
フェローについて詳しくないのですが、これらは市販型からの流用なのでしょうか?
(そもそも公式データの最高出力は40ps/8000r.p.m.、
 最大トルクは3.7kg-m/7500r.p.m.ですもんね。このメーターじゃ役不足)

こう見ると、フロントまわりのイメージは、ロータス11にも似ています。


そしてこれがリアショット。
右下にダイハツ・コンパーノ・クラブ・スポーツ(DCCS)と入っているのが見えます。
そしてリアカウルには、メッシュが貼られた
大きなエアアウトレットが開けられているのが見えます。

このフェロー7がレースに出場した記録はありませんが、昨日のlotus49fordさんの
コメントによると、ダイハツ・プロト研究家の芳村毅さんの情報では
ダイハツワークスの吉田 隆郎選手がこのマシンの熟成を担当したという話もあるそうです。
いずれにしろ、なかなか研究対象として興味をそそられる個体です。


現在、レストア作業が進められているというフェロー7。
元々のフレームはこのように完全に朽ちた状態になっていたそうです。
なにはともあれ、こうしてまた1台歴史あるレーシングカーが蘇るのは嬉しい限り。

早く完成した姿を見たいものですね。

ではでは。



2013.01.28 Monday

DAIHATSU Fellow 7 その1



Motor Press
(モータープレス)
極個人的な自動車偏愛日記



昨日、東京お台場で開催されたJCCAニューイヤーミーティング
本来なら、まずコンクールデレガンスの模様を中心としたイベントの模様を
お伝えするところですが、なにはともあれ、コレを紹介しないわけにはいきません!


FLレーシングクラブでの活動でお馴染み、千葉の鈴木モータースのブースに
展示されていたダイハツ・フェロー7です!
(写真は朝、左ライトカバーが外されていたときに撮影)

AUTOSPORT 1969年4月号 (三栄書房 刊)

ダイハツ・フェロー7は、1969年2月21日から23日にかけて開催された
第2回東京レーシングカー・ショーで公開された、幻のダイハツ・ワークスマシーン。

シャシーは、フェローSSのラダーフレームを補強したものに
トラスフレームを組みFRP製のボディカウル(ドアはアルミ製)を被せたFRレイアウト。
エンジンもフェローSSの2サイクル水冷直列2気筒をベースとした356ccユニットを搭載。
カタログデータでは、最高出力40ps/8000r.p.m.、最大トルク3.7kg-m/7500r.p.m.
車重320kgと公表されていました。

ただし、一度も実戦に参加することなくお蔵入りとなったため、
このクルマに関する資料は皆無といっていい状態。


現在入手できる唯一の資料は、ダイハツ・プロトタイプ研究のバイブルともいえる
Wonderful Small DAIHATSU-PROTOTYPE(芳村毅 著/30Degree Bank 刊)のみ。
(フェロー7は1Pを使い紹介されています。必読)

この360ccという排気量を考えると、
この年から当時レーシング・クォータリー・クラブ(RQC)の主催で
開催されることになるRQミニ・セブン・シリーズへの参戦を目論んだ? とも
推察されるところですが、ダイハツのワークス活動撤退を受け
このクルマがサーキットに現れる事はありませんでした。
いわば、P-1から始まる一連のダイハツ・プロトタイプの最後を飾る1台といえるのです。


ちなみにこれはBob日高さんからお預かりしている、
1971年のRQCミニカーフェスティバルの規則書。


当時はミニ・セダン・レース(M-TS)と、フォーミュラ500レース(F-500)
そしてミニ・セブン・レース(M-R)の3クラスに区分され、
ミニ・セブンの車輛規定には
A:JAF国内競技車輛規定のレーシングカー規定に合格したものでなければならない。
B:気筒容積は500ccを超えてはならない。
とあります。


一方こちらは、同じくRQCがオーガナイズしていた
オートスポーツ・トロフィー・レースの規則書(1971年)。


オートスポーツ・トロフィーでもミニ・セブンの他に
小排気量のスポーツカーレース
“ジュニアセブン(J7)"レースが開催されていましたが、
こちらにも
A:全ての参加車はJAF国内競技車輛規定のスポーツカー及びレーシングカー規定に
 合致したもので、主催者がその参加を認めた車輛とする。
B:クラス区分 J7-I  600ccを越え1300ccまで
       J7-II 1300ccを越え2000ccまで
とする車輛規定があります。

となると、フェロー7はRQミニ・セブン・レースにしか出場できないことになるのですが
レギュレーション上500cc以下とされたレースに、敢えて360ccで参戦するというのは
いささか現実味に欠ける気がします。

ということで、個人的にはフェローのイメージを高めるために作られた
ショーモデルなのかも??  という気もするのですが
他に情報をお持ちの方がいらしたら、教えてください。

ということで、このフェロー7の話題は明日に続きます。
ではでは。





2013.01.25 Friday

HONDA S600 COUPEのウッドステアリングのレストア その5

 

Motor Press(モータープレス)
極個人的な自動車偏愛日記



さて。トランポ熱が盛り上がる一方で、
コッチの方も地味に進んでおりました。


はい。エスロク君のウッドステアリングのレストアです。
取りあえず、痛んだ部分の補修、色合わせも終わり、
あとは、油性ニスを塗ってペーパー掛けすれば終了……だったのですが
実はここで事件が。

まず、当初用意していたチーク色の油性ニスの色がちょっと濃そうだったので
クリア(それでもちょっと茶色掛かってますが)に変更。
カラっと晴れた風のない日を選んで刷毛で塗る事にしたのです。
しかしこれがなんと大失敗。原因は、ニスの濃度が濃過ぎた上に重ね塗りしすぎたこと。
ドロドロのムラムラになって見るも無惨な状態に……。
結局、乾燥後にニスと塗料をこそぎ落とし、
また一からやり直しになったのでした(号泣)。
(そのときの写真がないのは、ショックが大き過ぎたため……思い出したくもない……)


しばしの冷却期間をおいてリベンジ。
今度は入念にニスの濃度を調整し、しつこいくらいに試し塗りをして
刷毛でサラっと一度塗り。


おっ! 良い感じ♪
今度はあまり塗り過ぎないようにしてじっくり乾燥。
そして軽くペーパーで整えて、また重ね塗り。
これを繰り返す事4回。



そしてじーっくり2日ほど乾燥させたあとで、耐水ペーパーで仕上げ。
結構下地を気をつけたつもりだったのだけれど、油性ニスが結構ツワモノで
気泡とか、ヒケとかがどうしても出てきます。
それを可能な限り潰したあとで、タミヤの細目コンパウンドで磨きあげ。


苦節約2ヶ月。一応完成です。
なるべくオリジナルの木目を残すことを心がけたので、汚く見えるかもしれませんが
気にしていたリペイントの痕も、ニスでキレイに馴染みました。なるほど。


割れていたスポークの基部もなんとかこのとおり。


欠けていたリムも、パッと見は分からなくなりました。
まぁ、なにせ初挑戦の素人の仕事ですから、細かいアラは大目に見てください(笑)。


で、よーーっし早速付けるぞ〜! と意気込んでみたものの。
もともと付いてたS800のステアリングがなかなか抜けなくて、汗だくになったところで断念。
ご近所のガレージ・フェイズワンの綿貫さんのところに駆け込んで
(そう、やっと車検通したのですよ)、ステアリング付け替えを
お手伝いしていただいたのでした。綿貫さんありがとうございました。



おおおーーーー!
夢にまで見たオリジナルステアリングの付いたコックピット。
S800用の樹脂製ステアリングに比べると大径なんだけど、握り心地もよし。

ただ、実際に付けてみると、磨いているときにはあまり気づかなかった部分の
ニスのヒケが目立ったりして、完成度はまだ60点といったところ。
このあとボチボチと仕上げて行こうと思ってます。



さて、そんなエスロク君と僕は、この週末1月27日(日曜日)に
東京 お台場の青海臨時駐車場で開催される
に出かけてきます。

エスロク君は、ホンダ・スポーツ生誕50周年を祝う
HONDA TWIN CAM CLUBのクラブブースの展示車輛として、
そして僕は今年もコンクール・デレガンス(今年のデーマはドイツ&フランス車)の
審査員としてお邪魔させていただくことになりました。

どうやらお天気も良いみたいですから、皆さんお台場でお会いしましょう!

ではでは。




2013.01.24 Thursday

なにせトランポ好きなもので その5

 

Motor Press(モータープレス)
極個人的な自動車偏愛日記



こんばんは。
『INSIDE THE PADDOCK RACING CAR TRANSPORTER AT WORK』
(DAVID CROSS/BJORN KJER著 DALTON WATSON FINE BOOKS 刊)
を手に入れてからと言うもの、ずっとトランポの深遠なる世界に
ハマりまくっているのですが、その中であるトランポの知られざる物語に出会いました。

Photo:Neil Fraser, courtesy RM Auctions.

それがこれ。

1956 Fiat Series 306/2 Grand Prix Transporter by Carrozzeria Bartoletti

そう、コブラを擁してヨーロッパに進出したシェルビー・アメリカンが
1964年から使用していたワークス・トランスポーターです。


Photo:Neil Fraser, courtesy RM Auctions.

昨年8月にモンテレーで行われたRMオークション
(結局、日本のメディアではあまり話題になりませんでしたが)の目玉のひとつとして
出品されたことでも話題になったこのクルマ、
ワークス・シェルビーのトランスポーターということで、
てっきりフォード製とばかり思い込んでいましたが、ベースになったのは
フラット12ディーゼルを搭載するフィアット306/2 Alpine というバスのシャシー。
それをカロッツェリア・バルトレッティが換装して
トランスポーターに仕立てたものなのだそうです。


そう言われてみると、確かに一昨年のソリチュード・リバイバルで見かけた
スクーデリア・フェラーリのフィアット642RN2にも似てますよね。
このトランスポーターの換装を手がけたのも、バルトレッティなのでした。

Photo:Neil Fraser, courtesy RM Auctions.

ちなみに、モンテレーでのオークションでは
結局99万USドル(!)で落札されたという306/2トランスポーター。
まぁ、exジョン・ワイア・ティームのGT40/1074が1100万USドルだったのを思えば
随分とリーズナブルでしたね。ほら、世界に1台しかないし。コッチの方が大きいし。

Photo:Neil Fraser, courtesy RM Auctions.

こちらがそのコックピット。
2006年に前オーナーが入手した後にレストアが施され
ご覧のようなコンディションに仕立てられたとのことですが
当時の写真でコックピットを撮影したものは皆無といっていい状況ですから
かなり資料的価値も大きいと思います。


Photo:Neil Fraser, courtesy RM Auctions.

現在載せられているのは、レイランド製11.5リッター 6気筒ターボディーゼル。
先にも書いた通り、本来エンジンはフィアット製の水平対向12気筒ディーゼルなので
ちょっとオリジナリティが……と言いたいところですが……。


Photo:courtesy RM Auctions.

……実はここからが本題。

個人的に、なぜ生粋のアメリカン・ティームであるシェルビーが
1956年製という古いフィアット製のトランスポーターを使用したのか?
ということがずっと疑問でありました。

そこで調べてみると、なんとこのトランスポーターを最初にオーダーしたのは
シェルビーではなく、マセラティのワークス・ティームだったのです。
(となると、フィアット&バルトレッティ製というのも納得できますね)

彼らは1956〜57年シーズンにかけてこのトランスポーターをF1ティームで使用したあと
1960年に、20歳代の若さでコンストラクター兼ドライバーとして
F1に挑戦したアメリカ人大富豪ランス・リヴェントロウ率いる
スカラブ・ティームに売却します。

しかし1962年いっぱいでスカラブが撤退。
すると、多くのスタッフとともに
306/2もシェルビー・アメリカンに移籍。
その際に、お馴染みのカラーリングにお色直しされることになるのです。

その後1965年に、306/2トランスポーターは
新たにル・マンのワークス・フォード陣営に加入したアラン・マン・レーシング
(この年はスクーデリア・フィリピネッティをサポート)へと売却。
この際に、オリジナルのフィアット・エンジンから
現在のレイランド製にエンジンが載せ換えられることになりました。

そして1968年にアラン・マンが新しいフォードR226トランスポーターを導入するのに
合わせ、306/2は、当時ローラT70を駆りプライベーターとして
活躍していたイギリス人、ジョン・ウルフに売却されるのです。

しかしウルフは翌年、手に入れたばかりのポルシェ917でエントリーした
ル・マン24時間レースのオープニングラップでクラッシュし死亡。
主を失った306/2は同郷のプライベーター、デイヴィッド・パイパーに引き取られます。

まぁ、なんと数奇な運命でしょうか!

パイパー時代には、映画『栄光のル・マン』で撮影車の輸送にも
活躍したという306/2。時期的な詳細は不明ですが、この他にも
ティーム・ロータスや、スクーデリア・フェラーリで使用されたこともあるのだとか。

おそらく様々なトランスポーターを調べてみても
この306/2ほど多くのティーム(しかも有名な)を渡り歩いた個体はないでしょう。
そういう意味では、99万ドルは安かったかもしれませんね(笑)。

ではでは。





2013.01.23 Wednesday

なにせトランポ好きなもので その4

 

Motor Press(モータープレス)
極個人的な自動車偏愛日記



昨日お届けした、ホンダ・レーシング・ティームのトランスポーターの続きです。




© Honda Motor Co., Ltd.

昨日、1967年からホンダ・ティームに就役した2代目のトランスポーター
(フォード・テームズ改)が、exイアン・ウォーカー・ティームのクルマだと
お知らせしました。

すると、ロータス・エンスー(というかイアン・ウォーカー・エンスー)の
Hさんから、「ホンダにいったとは知りませんでした
というメールとともに、こんな写真が送られてきました。

photo:H氏提供

2台のゴールドバグ26Rとともに写るイアン・ウォーカー・レーシング・リミテッドの
トランスポーター。そう、まさにあのホンダ・ティームのフォード・テームズの
オリジナルの姿であります。
(ゴールドバグと一緒の撮影なので1964年頃のものでしょう)

Ian Walker Racing The Man and His Cars  (Julian Balme著 Coterie Press 刊)

いやぁ、まさに灯台下暗し。
まるっきりカラーリングが違っているので思いつきもしませんでしたが
イアン・ウォーカー時代の写真は、このCoterie Pressの新刊
Ian Walker Racing The Man and His Carsにもバッチリ載っていたのです。

Ian Walker Racing The Man and His Cars

これは1963年。イアン・ウォーカー・ティームに就役した
初代テームズ・トランスポーター。

よく見ると、ノーズにエンブレムがなかったり、ルーフがハイルーフになっていなかったりと
ホンダ・ティームのテームズとの違いがわかると思います。
当時のメインカーであるロータス23やブラバムBT5/6を積むのなら
ハイルーフは必要なかったのかもしれませんね。

ちなみに、フォード・テームズをトランポとして使うのは当時のトレンドだったらしく
1964年にGT40を擁してスポーツカー選手権に殴り込みをかけた
ワークス・フォードも同じような形のトランスポーターを使っています。

Ian Walker Racing The Man and His Cars

そしてこちらが翌年、1964年にゴールドバグでレースをするようになってから
イアン・ウォーカー・ティームが使うようになったテームズ。

確かにこれを見ると、ホンダ・ティームが使ったものと
全くの同型車であることがわかると思います。
このテームズが前年のクルマを改修したものか
はたまた新たに製作されたものかは不明ですが、同一車である事は間違いないと思います。

Ian Walker Racing The Man and His Cars

これは別カット。
おそらく26Rを積むためにハイルーフ化する必要があったのでしょうね。
それにしても、イアン・ウォーカーのロゴマークは何時見てもカッコいいなぁ。

Ian Walker Racing The Man and His Cars

これは珍しいリアショット。
(模型マニアの皆さんはもっと大きな写真で見たいでしょうが)
当時のイアン・ウォーカーは少なくとも2台のテームズを使用していたのですね。
おそらくホンダ・ティームに2台とも引き継がれたと思うのですが
残念ながら、いまの時点で確証はありません。

しかしながら、イアン・ウォーカーの黄金期と
ホンダF1の黄金期の両方を経験したなんて、なかなかツイてるトランポであります。

Hさんありがとうございました。

実は色々調べてみると、このテームズの他にも
色々な有力ティームを渡り歩いた運のいい(?)トランポって他にもあるんです。
次回はそんなお話でもしましょうか。

ではでは。


(※ 追記)

HONDA F1 1964-1968 (二玄社 刊)

そんなテームズの資料が、もう1枚出てきました。
これは、かつて二玄社から出版された第一期ホンダF1のバイブル、
「HONDA F1 1964-1968」に掲載されていた1枚。

1967年のモンザ(あの伝説の勝利のレース)のパドックでの
ホンダ時代のフォード・テームズ。
こうして見ると、左サイドのコンテナに窓とハッチが新設されているのがわかります。

上で紹介したイアン・ウォーカー時代の2台には付いていないので
おそらくホンダ時代に施された改造でしょうか??

また謎が増えた!!





2013.01.22 Tuesday

なにせトランポ好きなもので その3

 

Motor Press(モータープレス)
極個人的な自動車偏愛日記



こんにちは。雪にならなくて良かったですねぇ。
さて、先日このモータープレスでご紹介した
『INSIDE THE PADDOCK RACING CAR TRANSPORTER AT WORK』
(DAVID CROSS/BJORN KJER著 DALTON WATSON FINE BOOKS 刊)
ですが、なにげに 代官山蔦屋さんで大反響なんだそうです。
1万円近い洋書を買うのって結構勇気がいりますが(笑)必読っす。はい。


Renntransporter (Matthias Braun/Alexander Franc Storz著)より

そんな空前のトランポブーム? の中、VW タイプII改RENNSTALL BUNKERの
情報を寄せてくださったタマさんのメールには、
さすがホンダ・エンスージァストらしく
これまた有名なホンダ・レーシング・ティームの
シトロエン・トランスポーターの画像が添付されておりました。

これってバブル? の頃にメイクアップから発売された伝説のキットですよね。
確か完成品も販売されていたけど、ハンドメイドゆえスゴい値段だった記憶が……。

シトロエン製のトラックをベースにヴァロン社製のボディを載せたこのトランスポーターに
関しては、様々な逸話が残っているので皆さんご存知のことと思いますが
ホンダのHPの丸野富士也さんの手記にも写真付きで出てきます)
実は資料がホントに少ない。


© Honda Motor Co., Ltd.


ホンダの広報写真から。
これは1964年9月のイタリアGP。モンザのパドックと思しき1枚。
シンプルな初期のグラフィックなのが分かりますが、
残念ながら全体像を写した写真はなし……。

右側にチラっと写っているのは、VWタイプIIのように見えますね。
タイプIIもホンダ・ティームのサービスカーとして使われていたのでしょうか?

© Honda Motor Co., Ltd.


こちらは1965年5月のモナコGPのパドック。
シトロエン・トランスポーターにRA272を積み込むところ。
ちらっと内部が見えるところが、逆に欲求不満を掻き立てます(笑)。


© Honda Motor Co., Ltd.


そして65年のイギリスGPのパドック。
ホンダのトランポ自体は写っていませんが、他ティームのトランポを含め
当時の様子が良くわかる、実にいい写真です。

奥に見えるゼッケン32のクーパーT76は、
ティレル・レーシング・オーガニゼーション(!)からエントリーのボブ・ボンデュラント。

ということは、もしやRA272の隣りのトランポはティレルのものか? と思いきや
どうやらティレルのトランポは、T76の前にちょろっと見える小さなトラックみたい。
RA272 の隣りに写るトランポがどこのティームのものかは残念ながら不明。

ちなみにT76の奥に見えるのは、有名なBRMティームの
レイランド・ロイヤル・タイガー・トランスポーターですね。



© Honda Motor Co., Ltd.


……ということで、シトロエン製のトランポの写真は結局見つけられなかったのですが
一方で1967年から就役したフォード・テームズ改のトランポの写真は
バッチリ出てきました。

これは1968年6月にザントフォールトで行われたオランダGPのパドック。
手前で話し込んでいるのは、ヨッヘン・リントでしょうか?


© Honda Motor Co., Ltd.


フォード・テームズのリアショット。
これも68年のオランダGPの写真です。

実はこのテームズ、イアン・ウォーカー・レーシングからのお下がりだったのだそうです。
うぉぉぉ〜! イアン・ウォーカー時代の写真見てみたい〜! と思うのは僕だけでしょうか?

ではでは。



2013.01.21 Monday

Autosport International 2013

 

Motor Press(モータープレス)
極個人的な自動車偏愛日記



こんにちは。
英国特派員コウゾウさんから、先週1月10日〜13日に
バーミンガムのNECホールで開催された Autosport International の模様が入ってきました。

photo:Kozo Fujiwara(B-Rev)

年のはじめに、英国のモータースポーツ関係者が一堂に集う
いわば新年会のような意味をもつこのイベントはまた
英国最大の室内モータースポーツイベントでもあります。

ということで、本国Classic Team Lotus も大きなブースを構えて展示。
今回は、ヒストリックレースで無敵? の強さを誇るタイプ25/R4と
CTL所有の72E/5が展示されておりました。

photo:Kozo Fujiwara(B-Rev)

そんなCTLブースの目玉のひとつがコレ。
1983年型のタイプ94Tのレストアがほぼ終わり
中身もバッチリ覗けるようにディスプレイされていたのでした。

ブランズハッチのレースで使用した特徴的な多段ウイングを装備しているのが
なんとも泣かせますね。なんでももう少しで走りだせるようになるそうです。楽しみ。

photo:Kozo Fujiwara(B-Rev)

また、アマルガムから1/8のロータス38が発売されることになり
その発表セレモニーが、デザイナーのレン・テリーを招いて行われました。
この38、かなり精密なデキみたいです。
ショーケースに納まる38を見つめるテリーさんの子供のような表情を見ればお分かりかと。

photo:Kozo Fujiwara(B-Rev)

また、こんなクルマも展示されておりました。
1964年10月にワークスから放出されたタイプ23B(シャシーナンバー:23-S-111)。

BRMの1リッターF2ユニットを搭載して、ロビン・ウィドウズのドライブで
1965年シーズンに活躍した個体なのだそうです。
オーナーは、このMPでお馴染みのニック・フェネル。

ニックさん、25をはじめ、この23Bといい、ゴールドバグ26Rといい
exフォード・フランスのタイプ27といい、良いクルマばかり持ってますなぁ。


photo:Kozo Fujiwara(B-Rev)

そんなオートスポーツインターナショナルの模様は、CTLのHPをはじめ
様々な機会にご紹介していきたいと思っておりますが
その中で寂しい話題をひとつ。

なんと、ヒストリックF1レースの最高峰として知られていた
FIA Historic Formula One(HFO)が、2012年シーズンをもって
終了してしまったのだそうです。

昨今、参戦費の高騰などが原因で参加台数が減っている
(その代わり、GROUP C RACING は盛況なのだそうですが)とは聞きましたが
1990年代に始まったサラブレッドGP以降、続けられてきた
FIA公認のヒストリックF1レースがなくなってしまったのは
なんとも寂しい限りです。
(ほかにGPマスターズもありますが、アチラは非公認だし、ローリングスタートだし)

うーん一度本物を見たかったなぁ。
ではでは。


ではでは。




2013.01.18 Friday

なにせトランポ好きなもので その2




Motor Press(モータープレス)
極個人的な自動車偏愛日記



最初に謝ります。
関係者のみなさん、ゴメンナサイ。まだ終わりません。
もう少しで終わると思うのですが……。

という締め切り地獄の最中、
先日お届けしたトランポネタに呼応して
隠れトランポ好きだという、エス・エンスージァストのタマさんが
こんな写真を送ってくださいました。



Renntransporter (Matthias Braun/Alexander Franc Storz著)という
ドイツの本に載っていたという、VW RENNSTALL BUNKER のカラー写真!

おおー! 小さくて見えねーぞ、という方にもう一度。

このRENNSTALL BUNKER、どうやら現存するらしく
海外のヒストリックイベントにその姿を現しているようです。
一度見てみたいなぁ。

ちなみに荷台に載せているのは、550ではなく718RSKのようですね。失礼しました。
タマさん、ありがとうございます。


そしてVW タイプIIつながりでもう1枚。
これも先日お話しした愛すべきプライベーター、故ピート・ラブリーのタイプII。

フェイスブックでこの話題をふったら、お馴染みのportagoさんが
「Pete LovelyはVWのディーラーシップも持ってたし、何らかチューンしてたかも」
と仰っていましたが、確かにそうでもしないと
いくら軽い49とはいえ、タイプIIで運べない気がするんですよね。

……というかその前に、こんなアクロバティックなことするんだったら
もう少し大きなトラックなりで運んだ方が良いと思うのだけれど……。

ちなみにラブリーの49のシャシーナンバーは49/R11。
1968年のオフに49/R2を69年スペックにアップデートする際に
シャシーナンバーを新たにR11に入れ替えた個体で
69年の南アGPでマリオ・アンドレッティが駆って決勝リタイア(予選6位)。
その後、ラブリーの手に渡ってプライベーターとして
1971年まで様々なレースで活躍したのでありました。

この49/R11は近年、Classic Team Lotus の手で
オリジナルの49/R2仕様に戻されて、様々なイベントで活躍中。


これが現在の49/R2。
R2といえば、49のデビューレースとなった1967年のザントフォールトで
ジム・クラークが見事なデビューウィンを飾った由緒正しい個体。
その後もクラークの手で、実に7勝(うち4勝はタスマンカップ)を挙げています。
昨年のグッドウッドFOSでもジャッキー・オリヴァーがドライブしてましたね。


そうそう、そんなラブリーのVWトラックの写真が載っているのは、
LOTUS 49 THE STORY OF A LEGEND(Michael Oliver著)

49研究のバイブルのひとつであります。

トランポの話、面白くなってきたのでもう少し続けます。
ではでは。




2013.01.17 Thursday

やっとコンプリート?

 

Motor Press(モータープレス)
極個人的な自動車偏愛日記



締め切り間際の同業者の方にはお分かりいただけると思いますが
ずーーーっと仕事場にこもってPCの画面に向かい合っているのは
肉体的にも精神衛生的にも非常によくない。
それが仕事がはかどっていない場合は尚更……。


はい。調べものをしながら、いろいろ電映空間を彷徨っているうちに
今月もついつい、ポチッとやってしまいました。
でもこれでやっと(今さらかよ)SUPER CG誌第一期(No.35までね)の
全巻が揃いました。なんかホッとしました。

とにかく商売柄、資料の類いはあればあるに越したことはなし。
別に今すぐ必要ってわけじゃなくても、チャンスがあれば買っておく。
これは鉄則であります。
できれば、伝説のスーパーカー&クラシックスも全巻揃えたいところですが
それはちょっと長い道のりになりそうだな。


でもお陰で我が仕事場の書棚は完全飽和状態。
ここに引っ越した時に、大きなラックを2本も揃えたのに既にいっぱい。
(ちなみに書棚は他にこの手前側にも立っています)
うーん、どうしたものか。
床が抜けるのが先か、地震で本に押しつぶされるのが先か……。


そもそも、某氏から譲り受けた往時のオートスポーツ誌(1968年〜1979年までほぼ完品)
なんか、もらってきた段ボールに入れっぱなしのままだもの。

まぁこの本たちのお陰で仕事ができているんですけどね。大事にしなきゃ。


あ、そうそう。
本と言えば、いま世界中で発売されている某誌の奥付に
こんな幻が……。


Thank you David & Octane Magazine UK staff !







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